「ベストディスプレイクリエイター賞」受賞!
幼少期はやんちゃだったようですが、小学生になってからは、絵を描いたり本を読んだりと比較的インドアな時を過ごし、将来は漠然と絵を描く仕事をしたいと思っていました。美大に進学したのもその夢を実現したかったからですが、グラフィックの世界は難しかったですね。卒業後はおのずとグラフィックデザイナーの道へ。幼少の頃からの夢だったお菓子のロゴやパッケージが作りたくて、「食」に関係する職種を求め飲食店関連の会社を選びました。入社後は販促部所属となり、主に店舗のメニューやPOP等の製作をしていました。デザイン会社に転職してからは、菓子店舗の立ち上げに携わる機会が多くなりました。特に某和菓子店立ち上げのプロジェクトに参加した事は、自分にとって大きな自信につながりました。古い商店街という立地と和菓子のイメージに、ロゴやパッケージデザインで和モダンの要素を加えました。馴染みの深いおやつが、とてもお洒落なお菓子となって話題沸騰!行列のたえない一躍人気店になった事は今でも誇りに感じています。
縁あって結婚する事になった時、一旦仕事を辞めて専業主婦になろうと寿退職を選択しました。その後、フリーで仕事をする事を考え始めた時、これまで独学でやってきたディスプレイをきちんと学びたいと考え、その機会を探していました。そんな時、資材探しに訪れたディスプレイミュージアムで、なんとなく手にとった業界セミナーのパンフレット。驚いたのは、当時の悩みが講座内容に合致したこと!すぐにセミナーに申し込み、講師のお話を聞いて入学したい、と思いました(決断は早かった)。
入学してからは目的が明確だったせいか、いろいろな知識がスポンジのように吸収できることが楽しくって、学生に戻った感覚でした。今まで疑問だったことを次々と答え合わせしているような感覚と、毎回変わる講師陣からのリアルな現場情報は、特に興味深く勉強になりましたね。今まで仕事をしていた時は、「こうあらねばならない」という理詰めの思考でモノ作りをしていましたが、「これもありだよ」「これでいいんだよ」と、講師陣から掛けられる声に肩の力が抜け、モノ作り本来の楽しさを思い出しました。「可能性は無限大!童心のような心もクリエイターとしてありだよ。」と教えてもらった気がしています。
マスターレッスンが始まった頃、フリーとしての転機と思える仕事が舞い込みました。前職での和菓子店成功例を評価されてのオファーでしたが、クライアントとしても非常に重要な店舗の案件であったため、重圧もあり、迷いも生じました。でも、この案件で質の高い提案が出来たのはスクールで学んだことが大きく役立っていると思います。新店舗の立ち上げは、鹿児島の老舗和菓子店。前職中に現場経験もある店舗でしたが、鹿児島県下最大の繁華街、天文館通りへの新店参入という事で、老舗感を残しつつも新しさを出す、という事が重要な課題となりました。全体プランを考えた時、まず役にたったのが「スタイルディレクション」の授業内容。それぞれのスタイルを定義づける事でイメージをわかり易く理解できる、という手法で、誰が見ても納得のできるプラン作りをすんなりスタートさせることができました。求められた要望に対し派手なインパクトで顧客をつかむのではなく、長く愛される和みあるパッケージデザインとディスプレイ演出を提案。老舗の伝統と現代風な和風クラシックを定義にイメージボードを制作し、「とてもイメージしやすい」と共感を得られた事はとても自信に繋がりました。今までだと自分の中でイメージを固めるまでに時間がかかり、迷いを生じる事もあったのですが、イメージを整理する術を学んだ事は大きかったですね。その後も現場指示などスムーズに作業を進められたのは、基本を学んだ土台があればこそだと確信しています。
卒業制作は「売るためのディスプレイ」をテーマに、購買意欲が高まる明確な商品訴求でWDを制作しようと考えました。前職ではお店の基本となるアートディレクションが中心だったので、特定の商品にスポットを当てた装飾的なディスプレイという経験はありませんでした。卒制では飾る楽しさも体感しながらスマートでカッコイイWD 完成を目標に、イメージにピタリとくる「商品」探しをはじめました。そんな時、ふと入った雑貨店で目に留まった「有機シリアル」のパッケージ。自分の中で漠然と抱いていた課題を表現するのにピッタリで、すぐに「これだ!」と思いましたね。そのせいか、プランを立て始めた時から、パズルがパチパチはまるように完成したWD のイメージができました。一番苦労したのは、それを伝えるプレゼンテーションまでの作業でしょうか。いつもぐるぐると頭の中にシリアルがあったほど。どうしたら、みんなが納得してくれるだろうか???めぐり巡って辿り着いたコンセプトが「New Organic Life」。これまで「身体に良い」ことばかりに着目されてきた有機食品を明るく洗練されたインパクトで惹きつけ、「身体にも優しい」「食べても美味しい」のメッセージを感じてもらえることが一番のポイントでした。想像以上に手描きのパース制作も大変で、伝える事の難しさを痛感!細部まで表現できなかったせいで、プレゼンテーションで講師に理解してもらえなかった、という反省点もありましたが・・・。短期間にそんなこんなの苦しみを乗り越えた分、満足のいくWDに仕上がったと思っています。
実は同時期にボリュームのあるフリーの仕事も重なっていたので、自分の中ではかなり余裕のない状況だったんです。いま思い返すと、クラスメイトの存在が大きかったと感じています。個性豊かなメンバーは年齢も性格も全くバラバラでしたが、個々が持っている得意分野を惜しげもなく分け与える助け合い精神が豊かで、迷った時や不安な時、どれだけ助けられたかわかりません。卒業式で「ベストディスプレイクリエイター賞」を受賞した時、プロとしてプライドをかけた制作クオリティを認めてもらえた事は大きかったのですが、それと同じ位、陰で支えてくれたクラスメイト達の存在も大きいと感じました。社会人となってからあまり経験することの少ないこの出会いは、特別なのだと感謝しています。