ディスプレイのヒト、モノ、コトをつなぐ JDCA

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MESSAGE
講師からのメッセージ

大髙 啓二

未来のクリエイターへ

気づかせてくれたのは「お客さま」

私はアパレル希望で大手小売業に入社しました。ところが配属先は第7希望の時計売場。当時の私には「時計は時間さえわかれば良い物」という価値観しかなく、高級時計を前にしても「こんな高い時計、誰が買うんだ?」とどこか冷めた思いで店頭に立っていたんですね。ただ、商品知識はしっかりと頭に入っていたし接客会話は得意だったので、販売には自信があったんです。
ある日のこと。素敵なミセスが来店し、高級時計ロレックスのショーケースの前で「お兄さん、これちょっと見せてくれる?」と声を掛けられたのです。初めての高級時計接客!緊張しながらも、自分の持っている知識を洗いざらい引き出しながら接客していると、ふとお客様から「お兄さんは何の時計を着けているの?」と問いかけられました。 ・・・私は恥ずかしさでいっぱいになりました。 その時、私が腕にしていたのは高級時計の類似商品だったからです。高級時計の価値を軽んじながらも見た目だけは少し背伸びをしたくて、そんなものを身に着けていたんですね。
「お兄さんがどれだけ知識があっても、私はお兄さんからは買わないわ。本物を買おうとしている私に、偽物をしているお兄さんの言葉は響かないわよ。これは自分へのご褒美や記念として購入するのだから、どこで買うのか、誰から買うのか、そういうことがとても大切なの。」 本当に恥ずかしい気持ちと、お客様に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。「申し訳ございません!」頭を下げながら、「私も本物を買います!」と、お客さまの目の前で自分のロレックスを買いました。当時の私には分割払いでしか手が出ませんでしたが、その行為にお客様もご納得いただき、結局私からロレックスを購入してくださいました。この経験は、一人前の商売人を目指すスイッチになりました。 その日から、本物を身につけたことで、商品のスペックだけでなく着け心地や自身の体験を混じえながら接客するようになりました。結果、社内でNo.1のセールス記録までつくることが出来たのです。 気づかせてくれたのはお客様です。今でも本当に感謝しています。

演出のチカラ

時計店で店長時代の頃。業界全体が不景気で沈み込んでいました。しかも私の店は大激戦区の新宿。「数ある店舗の中で、どうしたらうちの店を選んでもらえるのか?」という事が課題でした。正規代理店の為、価格競争はできません。では、うちのお店で過ごす時間に付加価値をつけようと考えました。そう、店の「演出」にチカラを入れたんです。 季節はクリスマス商戦目前。パーティーをテーマに店頭から店内までレッドカーペットを敷き、お客様にはハリウッドスター気分を味わいながら時計選びを楽しんでいただく演出をしたのです。たちまち周囲の競合店や業界などでも話題にのぼり、お客様にもお買い物を楽しんでいただくことができました。売上の数字も、期待以上の結果がついてきたのです。 「演出」には人の心を動かすチカラがあると実感した出来事でした。
店舗は、商品をただ販売する場所ではなく、買い物する時の思い出までを販売できる場所でもあるのです。 商品編集や店頭プロモーションなども独自の工夫を凝らし、新しい試みを次々と実践していくうちに評判を呼び、このVMDの仕事にたどり着くのは自然の流れだったのかもしれません。

頭をリセットする時間

「心の琴線(きんせん)に触れる」という言葉がありますが、人は大きく心を動かされた時に、想定外の行動を起こすことが多々あります。そこにVMDのヒントは隠れています。 人の心の琴線はとても敏感で、時代と共に変化する生き物だと思っています。だからこそ、そこに働きかける仕掛けは決して一様ではなく、柔軟な変化が求められます。 私には、もう25年も続けている阿波踊りや、6年前から始めた中国伝統楽器の二胡があります。最近ではアーティストとしてボランティア活動もしています。阿波踊りは人々の心を踊らせ、二胡の音色は人々の心を癒し、ボランティア活動は人々の心を援(たす)けます。 自分自身がいろいろな感動に出会うことによって、その体験が、人の心を動かす空間を生みだすチカラに繋がるのです。日常の頭を一度リセットさせる時間は、その後、新しい発想を生み出してくれる活性剤となっています。
トップセールスマンとして身につけた「商売人」としての顔と、感動表現(自分表現)を通じてメッセージを送る「アーティスト」としての顔。二つの顔は別のものですが、自分という媒体の中で、うまく連鎖していると思っています 。

未来のクリエイターへ

人の心を動かす空間を創る。さらには、その空間を最大限に活かせるスタッフの教育も大切だと思っています。空間、ヒト、時間・・・、その空間に携わるすべてをトータルした発想で、新しいVMDスタイルを発信できたらと、私も未来に向かってチャレンジを続けています。 JDCAの講座では、私の経験を最大限に活かした実践的な内容で、売り場づくりのレシピをお伝えしたいと思っています。経験やレシピを伝えることはできますが、クリエイティブな発想は、ひとりひとりのLIFEから生まれます。皆さんも自分LIFEをたくさん磨きましょう。そして一緒に、演出のチカラ、VMDの価値をどんどん発信していきましょう。