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エキスパート・インタビュー vol.01 大髙啓二氏

2018.11.05

大髙啓二

表参道ヒルズ10周年のクリスマス演出、品川プリンスホテル人気ブッフェ「ハプナ」の大規模リニューアルなど、多彩なアイディアで斬新な作品を生み出すVMD+五感空間演出プロデューサーの大髙啓二氏。
近年は海外で精力的に講演も行い、ときには専門誌の表紙を飾るなど、活動の幅を広げています。そんな大髙氏に、今後のVMD業界に訪れる変化や求められる人材など、さまざまなお話を聞かせていただきました。

新時代のVMDに必要なのは、店舗の空間価値を高めること

エキスパート・インタビュー vol.01 大髙啓二氏二
 
●大髙さんの目から見て、現在のVMD業界はどのような状況にありますか?
 

近年はオンラインで物を購入できる時代に突入しているため、リアル店舗の“存在価値”が問われるようになっています。リアル店舗は、オンラインというライバルと勝負していかなければなりません。これまでは商品をいかに魅力的に陳列するか、つまり視覚的な商品計画がVMDのメインでしたが、それだけでは「売上を伸ばす」というVMD のゴールを達成することができない可能性があります。実際にアパレルやインテリア業界では従来の視覚的なVMDを実戦しているにもかかわらず、売り上げが伸び悩んでいるという企業が少なくありません。
 
ひとことでいえばVMDは端境期を迎えており、過去のやり方だけでは通用しない時代になっているのです。

 
●そのような時代の中で、今後VMD業界ではどのようなニーズが高まるのでしょうか。
 

「ライフスタイル複合型」「体験・体感型」店舗が求められていくのではないでしょうか。
例えばコーヒーを販売する場合、そのコーヒーを購入する人間がどのようなライフスタイルを望んでいるかを考察し、それに合致した洋服やインテリアを一緒に並べるようなイメージです。購入者が店舗に来ることで、自分のライフスタイルをお店で体感できるような店舗づくりに注目が集まっているのです。代表的な例として本と家電が融合した 『TSUTAYA 家電』、インテリアの中に食やアパレルや食品を盛り込んだ『無印良品』などがありますね。そういった店舗であれば、オンラインでは得られない“体感する”という魅力によってリアル店舗の付加価値を生み出すことができます。
 
また、オンラインとの融合型店舗も今後はニーズが高まるかもしれません。店舗で実際の商品を体感し、購入自体はスマートフォンで手軽にできるというタイプです。いずれにせよ、五感体感型の店舗を作り、店舗の空間価値を高めることが今後のVMD業界のカギとなるでしょう。

国内のみならず、海外でもVMD需要が急増

大髙啓二
 
●VMD業界で働くことの面白さや、やりがいはどんなところですか?
 

VMDのマーケティングは世界 特にアジアにまで拡大していますし、国内でのニーズも高まっているため、ビジネスチャンスにあふれているといえるでしょう。
 
私も中国を中心として、海外で多数の講演のオファーをいただいています。特に中国におけるVMDニーズは非常に高く、物を作ることに長けていても、それを魅力的に見せる仕組みとノウハウを伝えることが不得意な傾向にある中国市場でのVMD需要は国内を上回る勢いです。最近は雑誌の特集で私の活動が取り上げられることも増えており、“新VMD+”に対する関心や注目度が高まっていると実感します。
 
そういったニーズの増加に応じて、VMDの価値も変化していると思います。以前に品川プリンスホテル人気ブッフェ『ハプナ』の大規模リニューアルを担当しましたが、その際には著名な設計士の方々と肩を並べて仕事をさせていただきました。設計ありきでVMDを考えるのではなく、VMDありきで設計を考えていくようなケースも増えるかもしれませんね。

魅力的な作品を生み出すには、自身が体験することが重要

●VMD業界には、どのようなタイプの人が向いていると思いますか?
 

いろいろなことに興味をもって、いろいろなことを経験する人でしょう。例えば人気のある店舗に積極的に足を運んでその空間を体感していれば、なぜその店が人気なのか、行動心理や視覚的な側面から科学的に考察することができるようになります。もちろん感性やセンスも重要ですが、それもさまざまな経験をすることで高めていけるのではないでしょうか。
 
クライアントが「あの店舗のような空間を作りたい」と、ベンチマークしている店舗の名前をあげることがあります。自分がその店舗に足を運んでいればクライアントの信頼も獲得できますし、私の意見に説得力も生まれるわけです。そういった意味でも、VMDを手がける上で自身が体感しておくことは非常に重要です。
 
今後のVMDはオンラインとも切り離せない関係になりますから、オンラインも学んでおくことが必須だと思います。オンラインと店舗の両方の特性を理解した上で、店舗における購入者の行動を科学的に分析できるVMDクリエイターが誕生してくれれば、今後のVMD業界はさらにハイレベルなものへ進化していくのではないでしょうか。

 
大髙啓二
 
●最後に、メッセージをお願いします。
 

今後はVMDに限らず、店舗設計、プロモーション用の動画や広告作成など、一つの店舗にかかわる全てのことをディレクションしていける存在になりたいと思っています。VMDはそういった可能性にあふれており、世の中に大きな影響を与えられる仕事なのではないでしょうか。海外で活躍するシーンも増えるでしょうし、国内での注目度もますます高くなるはずです。VMDの知見がベースにあれば、きっと未来が強くなると思います。